昔、テレビの番組で遺品整理業者が依頼者の実家を片づけるという企画を見たことがあります。
当時は「自分の実家なのになぜ業者にお願いするのか?」と少し否定的な感想を抱いていましたが、いざ当事者になってみるとその考えは一変しました。
私の場合、祖母や伯母が住んでいた『母の実家』の遺品整理の当事者になった訳ですが、祖母が亡くなってから長らく一人暮らしをしていた伯母の遺品は、整理整頓されていたとはいえ膨大な量となって家中に残されていました。
後継者も無く空き家になってしまった住宅の家財は、いずれ処分するほかありません。
一つ一つを手に取って要る要らないを判断し、ごみは自治体の定めに従って分別、処分。
思い出や懐かしさが邪魔をして判断に迷いが生まれ、作業が進まないことも想像に難くありません。
これを残された親族だけで行えるのか?
私は難しいと考えました。
漠然とではありますが、時が来たら遺品整理業者にお願いしようと思うようになっていました。
遺品は思い出の宝庫
すぐに片づけなくてもよい
大切な人を亡くしたばかりの頃は、遺品を目にするだけで悲しみや辛さが蘇り、到底片づける気持ちにはなれません。
様々な事情ですぐに片づけなくてはいけない場合もありますが、できれば一定の時間を置き、自然に気持ちが片づけに向く時を待つのがよいでしょう。
私の場合、遺品整理をしようと決心するまで1年以上、それを実行に移すまで更に半年の時間が必要でした。
伯母は、足の骨折をきっかけに亡くなるまでの約6年間を高齢者施設で過ごしました。
自宅で転倒し救急搬送で入院、完治しても一人暮らしは厳しいとの判断で、退院後はそのまま高齢者施設に入居することになったのです。
当時、救急搬送の一報を受けて訪れた伯母の家には、転倒前に夕飯のお味噌汁を作ろうとしていたのか、ガス台には小さな片手鍋、まな板に油揚げなどの具がきれいに切り揃えられたまま残されていました。
さっきまでの普通の暮らしが一瞬で失われてしまった、その光景は今でも忘れられません。
食品類は腐ってしまうのですぐに処分しましたが、その日を境に伯母の部屋の風景はまるでタイムカプセルのごとく長きに渡り保存されることになります。
それから約6年の時を経て、最期まで自宅に戻ることなく天に召された伯母の気持ちを思うと、全てがまだ伯母の所有物であるように感じられ、勝手に手を付けることは憚られる気持ちが強くありました。
それが一周忌が過ぎた頃、心境に変化が現れました。
「もう処分しても大丈夫。」という気持ちになり始めたのです。
「この時期を逃したらきっと後まわしになってしまう。」
そう感じた私は、遺品整理をするための期限を決めることにしました。
エアコンはもう古くなって使えないので、気候がよくなる今年の秋冬までに行おう!と。
「もう処分しても大丈夫」と思えたら
故人の遺品の中で残したい物、譲り受けたい物をピックアップします。
私の場合、伯母の家が他県にあることもあり、なかなかゆっくり遺品と対話する時間を持てずにいました。
やっとじっくり向き合えたのは、遺品整理業者の見積を取るため訪れた3回のみ。
今となっては思い残すことはありませんが、もう少し対話の時間を持ってもよかったのかなとも思います。
遺品全てを知ろうとしない
上記の話と矛盾しているかのようですが、遺品は故人の持ち物だったものです。
誰でも同じだと思いますが、その中には他の人に見られたくない物もあるでしょう。
それをうっかり知ってしまうことで、こちらが辛い思いや苦しい思いを抱え続ける可能性もゼロではありません。
「処分してしまうと後で困るのではないか」、「思わぬお宝が出て来るのでは」など、いろいろ考えはありますが、ここは目をつむって「第三者である業者の人にお願いしよう」と決めるのも1つの方法かと思います。
思い立ったら始めよう!
遺品整理業者の選定
ネットで検索し「みんなの遺品整理」を通して業者を探すことにしました。
みんなの遺品整理は遺品整理業者の一括見積もりができる検索サイトで、全国860社以上の業者から一括で見積もりを依頼することが可能です。
「遺品整理士」の資格を発行する一般財団法人「遺品整理士認定協会」と提携し、厳しい加盟審査を突破した優良業者のみが掲載されているという点が特に決め手となりました。
探し方は簡単。都道府県から市町村を指定し、こだわり条件(空き家片付け・不用品の買取・遺品の供養・立ち会いなしで作業可など、24種類の選択肢から複数選択可能)にチェックを入れると希望に沿った複数の業者が表示されます。
各業者のページからは口コミや評判も見ることができ、県別のランキングページもあるので優良な業者を簡単に見つけることができます。
今回は少しでも費用を抑えたかったので、不用品の買取を行っている業者2社から見積を取ることにしました。
それぞれの業者に伯母の家を見てもらい、しっかり話をしたうえで最終的には金額の安さではなく信頼性の点から決めました。
骨董品・着物などは出張買取へ
今回お願いした遺品整理業者の方によると、骨董品や着物が多数ある場合は、専門の業者に査定してもらった方が買取金額が高くなる可能性があるのだとか。
売却することで少しでも遺品整理の費用に充当できるのならと、専門の買取業者に出張査定してもらうことにしました。
骨董品・着物の買取業者はネットで検索、出張エリア内の業者の中から実績や口コミを見て決めました。
買取業者にお願いする前に、手元に残しておきたい品物はあらかじめ除外するのを忘れないようにしましょう。
どちらの業者もそれぞれの専門なので、1つ1つの品物について評価に触れながら査定してもらえた点がとてもよかったです。
査定の結果も想定通りで満足のいく内容でした。
何より、故人の大切な物がこれからも誰かの役に立ち活かされ続けることに、安堵と喜びを感じました。
買取専門店・リサイクルショップへ持ち込む
出張買取で買取不可になってしまった物でも可能性あり!
貴金属や切手・古銭、テレカなどは買取専門店へ、リサイクルできそうな小物などはリサイクルショップに持ち込んでみましょう。
買取専門店は今やショッピングセンターにも出店するほど身近な存在となっています。
「ちょっと入りにくい」と思ってしまいがちですが、査定だけでも快く応じてくれますので気軽に相談してみては?
時間が許すなら複数の店舗を掛け持ちして、納得のいく査定金額のお店に買い取ってもらうのがおすすめです。
一方、リサイクルショップは休日に大量に買取品を持ち込む人が多いため、査定に数時間かかることがよくあります。
混雑を避けるなら平日の持ち込みがよいでしょう。
買取専門店の一例
「エコリング」……買取可能な品目が幅広いのが魅力です。店舗買取のほか、出張買取、*宅配買取あり。
(*宅配買取とは……指定の無料宅配キットに売りたい品物を詰めて送料無料で送るだけで買取が完了する便利なシステムのこと。次の項で説明しています。)
「買取むすび」……他店で買取不可だったものも買い取ってくれます。私の経験ですが、買取専門店を数店舗まわっても査定額が振るわなかったものを一番高く買い取ってくれました。店舗買取のほか、出張買取、宅配買取あり。店舗買取・出張買取はエリアが限られているので要確認。
リサイクルショップの一例
「セカンドストリート」……洋服・ブランド品・雑貨・スポーツ用品・食器・家電など幅広い分野の買取をしています。店舗によって買取できる品物が異なるので事前に確認してから持ち込みましょう。店舗買取のほか、出張買取、宅配買取あり。(それぞれ買取可能な品目が異なるので要確認)
「BOOKOFF SUPER BAZAAR(ブックオフスーパーバザー)」……本はもちろん洋服・ブランド品・雑貨・スポーツ用品・食器など幅広い分野で買取しています。「ブックオフオンライン」で宅配買取あり。
箱に詰めて宅配買取
店舗に行けない、まとめて複数の品物を売りたい、非対面を希望している、などの場合は「宅配買取」の利用がおすすめです。
宅配買取は、指定の無料宅配キットに売りたい品物を詰めて送料無料で送るだけで買取が完了する便利なシステム。
査定後の金額を見た上で買取ってもらいたい品物を選ぶことができ、金額に納得できない品物については無料で返送してくれます。(買取対象品以外の品物の返送料は自己負担です。)
買取対象品は業者によって異なるため、事前によく確認してから申し込みましょう。
宅配買取業者の一例
「コメ兵」……ブランドバッグ、ジュエリー、時計、洋服などの買取をしています。発送は自宅のほかコンビニも選べます。ジュエリーはダイヤモンド以外の石のみの買取や18KGPなどのメッキの品物の買取は不可、洋服はUNIQLO、GU、H&Mなど対象外のブランドがあります。
エコリング」……ブランド品だけではなく他社で断られた品物も幅広く買取している点が特徴。更に、対象商品が同梱されていれば、ノーブランドの衣類・小物やメッキのアクセサリーの買取もOK!
「ネットオフ」……ブランド&総合買取コースでは、ブランドのバッグ・財布・洋服・時計・ジュエリー・アクセサリーのほか、金・プラチナ製品・家電・スマホ・メガネ・プラモデル・万年筆・楽器・三味線など、幅広い品物を買取しています。発送は自宅のほかコンビニも選べます。
「「セカンドストリート」では、指定のブランド衣類や生活雑貨・楽器・ホビー用品・スポーツアウトドア用品・キッズ衣類の買取をしています。
粗末に処分できない物は「お焚き上げ」
人形や写真・手紙など、粗末に扱えずごみとして処分するには難しい物を手放したい時には、「お焚き上げ」という方法もあります。
私は「みんなのお焚き上げ」を利用して、写真をお焚き上げしてもらいました。
詳しくは、ブログ「想いが込もっていて捨てにくい品物の手放し方【みんなのお焚き上げ】」をご覧ください。
仏壇はどうするか?
色々な考え方がありますが、私の場合は菩提寺にお願いして閉眼供養を行い、仏壇は遺品整理業者に依頼してお焚き上げしてもらうことにしました。
閉眼供養を行わない選択肢も考えたのですが、その後に何か悪い事があった時「閉眼供養をしなかったせいではないか」と思ってしまいそうなので、気持ちに区切りを付ける意味でも行うことに決めました。
閉眼供養は僧侶を家に招いて行うため、菩提寺に連絡して来ていただける日にちを調整します。
遺品整理の流れ
手元に残したい物の選別や買取してもらいたい品物の対応、仏壇の閉眼供養が終わったら、いよいよ遺品整理です。
残すもの残さないもの
見積時に、片づけてほしい物(エアコン、ガス湯沸かし器、物置など)、整理しないで欲しい物(アルバム、掃除機など)、探して欲しい物(土地家屋の権利書・故人との思い出の品で探せなかったものなど)について聞き取りがあり、反対に片づけられない物(庭の沓脱石・木の切り株など、産業廃棄物)の説明も受けました。
以上の内容に沿ったかたちで遺品整理が行われます。
場合によっては近隣へのあいさつも◎
当日は遺品整理業者のトラックが家財を運び出すために家の前を何往復もします。
周辺の道幅が狭いと道路をふさぎ、近隣の車の出し入れに影響が出る可能性も。
物置の解体や家財の搬出で大きな物音が出ることもあるので、影響がありそうなご近所には事前に業者が入る旨を伝えておくとよいでしょう。
立ち合いについて
遺品整理の際、「どうしても立ち合いたい」という場合以外、立ち合いは不要とのこと。
伯母の家は他県にあるため事前に鍵を預かってもらい、当日の立ち合いは無しでお願いしました。
当日のやりとりはLINEで
遺品整理作業中は業者の方とLINEで連絡を取り合うことに。
作業中、業者の方が処分してよいか迷う品物の確認は、画像を送ってもらい判断しました。
作業終了後はLINEで全部屋の画像を送信してもらい作業の完了を確認。
庭付き平屋建て・3Kの間取りでしたが、2.5日程度で遺品整理が完了しました。
後日、業者の方とともに内覧をして状態を確認、不要な物が残されている場合はその場で取り外し引き取ってもらいました。
簡易清掃付きのプランでしたが、とてもきれいに掃除されていて大感動でした。
おわりに
伯母が施設に入居してからは、残された空き家が気がかりで、移動中の車窓から一軒一軒の住宅が目に映るだけでも漠然とした不安に襲われ重苦しい気持ちになったものでした。
今思うと、そこには近い将来訪れるであろう遺品整理に対する不安もあったのかもしれません。
遺品整理を終えた今はだいぶ心が軽くなり、伯母の家を有効に活用できたらいいなと思える心境にもなりました。
それと連動してか、今までできなかった自宅の不用品が片づけられるように!
排水溝に詰まった枯れ葉を取り除くと一気に水が流れ出すように、心につかえていたものが取り除かれると一気に何かが動き出す、そんな感じでしょうか。
遺品整理の前は得体の知れない不安が心に暗い影を落とし行動を阻んできましたが、思い切ってやってみて本当によかったと実感しています。
以上が体験談です。
つたない話ではありますが、この体験談が遺品整理でお悩みの方の背中を少しでも押すことができれば幸いです。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
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